事業承継

事業承継の問題は自社株の承継問題(後継者がいる場合)と自社株の売却の問題(後継者がいない場合)に分かれます。

自社株の承継問題
後継者がいる場合
自社株の承継問題


自社株の売却問題
後継者がいない場合
自社株の売却問題

≪事業承継問題にあたっての当事務所の指針≫

よく耳にするのが私的成功と社会的成功という言葉です。会社の経営者としての成功(社会的成功)を収めたとしても、ご家族との関係が悪ければそれは必ずしも成功とは言えない、すなわち、成功とは、私的成功と社会的成功があり、その両方の成功があってこそ真の成功であると説明されます。

しかし、生きている間に私的成功と社会的成功を収めたとしても、社長が亡くなった後に、家族が相続でもめ、それが原因で会社の業績が不振となり、閉鎖に追い込まれ、多くの社員やその家族、取引先の社員やその家族が影響を受けたとすれば、それは成功といえるのでしょうか?
社長の成功とは、生前の成功のみならず、亡くなった後の私的成功と社会的成功まで含まれ、むしろ亡くなった後の私的成功と社会的成功こそが重要ではないかと考えます。

そして、経営者の死亡後の私的成功、社会的成功とは、
(ア) 相続人間で争わせない。
(イ) 企業を存続させ、雇用を守り、地域経済に対して相続による悪い影響を与えない。
ことであると定義しています。

当事務所は、事業承継とは、社長の死亡後の私的成功と社会的成功を支援することであると位置づけております。

よって、①相続人間で争わせない。②企業を存続させ、雇用を守り、地域経済に対して相続による悪い影響を与えないことが、自社株の事業承継問題における目的や目指すべき着地点ということになります。

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自社株の承継問題について

当事務所が自社株の承継問題を取り扱う場合の対策項目と順番は以下のとおりです。
私はこの検討事項と順番が王道と考えており、特に順番を間違えると大変なことになると考えております。

よくありがちな失敗としては、最初に節税を考えることです。節税の売りにしているコンサルタントには特に注意するべきであると考えています。


1 遺言書について

遺言書を作成する際には、無効となる可能性を低くするために公正証書遺言の作成をお勧めしております。大切な資産について遺言という形で遺言者の最終意思を残す以上、それが後々無効となれば、相続人間で紛争となる可能性が高まります。

2 不動産の共有と自社株の分散は避ける

不動産も自社株も一旦共有状態となったり、相続人間で分散されてしまうと、これをもう一度単独所有にするためには非常に労力がかかります。

また、不動産の場合は共有状態における使用収益件、自社株の場合は議決権の行使という形で争いになるというケースが多いです。
そして、紛争解決方法としては、不動産の場合は共有物分割請求という形で裁判所に紛争が持ち込まれ、解決に長期間を要しますし、仮に争いにならなかったとしても、譲渡所得税や不動産取得税等の課税がなされるのでかなりの費用負担となります。

自社株の分散の場合は、少数株主の買い取り請求という形で紛争となり、これについても譲渡所得税等の課税負担が発生します。
要するに、不動産と自社株を共有もしくは分散させること自体は、非常に簡単ですが、それを元に戻すには非常に面倒でお金がかかるということです。

しかも、自社株の分散の場合は、単なる兄弟げんかが企業経営にまで影響を与え、社員や取引先までにその影響が及びます。社員や取引先からすれば、大変迷惑な話ですし、地方の優良法人内の相続紛争が地域経済にまで影響を与えるという事態にもなります。
このように特に自社株の分散については、少人数の家族間の紛争が、企業継続にまで影響を与えるということについて、特に留意する必要があります。

この点を軽視して、節税を第一に考える一定のコンサルタントの処理は、私としては全くの的外れであると考えております。

3 遺留分を侵害しない

◆遺留分とは、贈与や遺言によっても侵害することができない相続人の権利です。遺留分が侵害されると遺留分減殺請求権が行使されます。通常は相続分の2分の1になります。遺留分減殺請求権が行使されると、せっかく遺言書を作成しても、結局は、不動産の共有や自社株の分散が生じる可能性があります。

最近は、弁護士以外の士業の先生方が遺言書を作成するケースも散見され、専門として相続業務に従事されている先生かどうかは、遺留分に対する理解度によってわかります。遺留分を侵害した場合に、紛争が発生し、どれほどの感情的な対立が発生するのかについて事前に全く留意していない遺言書が近時急激に増えていると感じています。紛争案件について代理権のない弁護士以外の士業は事前に十分に審判例等を参照して紛争発生の可能性を予測することは事実上困難であると思いますので、弁護士以外の士業の先生方が遺言書の作成を依頼された場合は、必ず専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

◆では、遺留分減殺請求権が行使されないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
遺留分がまず一体相続財産に占める割合がいくらになるのかを考えます。
父が遺言する場合は、奥さんと子供二人がおり、長男に自社株も含めた財産の全部を相続させる場合ですが、父と奥さんのいずれが先に死ぬかによって結論が変わりますのが、対策を行う場合は、奥さんが先に死ぬと想定します。
そうすると子供二人だけが相続人となります。子供の相続分は2分の1ですので、次男の遺留分は4分の1です。
子供が3名の場合、4名の場合、5名の場合について同じように考えると、2名の場合は25%、3名の場合は33%、4名の場合は37%、5名の場合は40%の遺留分があるということになります。

よって、遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使して争いになることを避けるには、上記の比率で計算した遺産を遺留分権利者に相続させる旨の遺言を書けばいいということになります。
子供が二人で、長男に株式全部を相続させ、次男には金融資産のみを相続させるという場合は、資産総額が2億円で、株式の評価額が1億5000万円であれば、次男には5000万円の金融資産を相続させれば、遺留分減殺請求権を行使することはありません。
父の遺産として、金融資産がほとんどないという場合も結構ありますが、長期的な計画を立てることで遺留分相当額の金融資産を用意しなければなりません。

したがって、相続対策というのは10年から15年ぐらいかけて準備を行っていくものであると考えております。
会社代表者の父が病気になってから急いで長男に後を継がせるために、次男の遺留分を侵害するような強引な遺言を書き、残された兄弟間で紛争となるというのがよくあるケースです。特に兄弟が多い場合は大変です。嫁に行った姉に遺産をもらう権利はないなどと古臭い言い方をする人も多いですが、法律上兄弟は平等であり、不暴動に取り扱われたとしても遺留分まで侵害されるいわれはありませんので紛争となる可能性が高くなります。

また最近は、議決権のない種類株を発行すればいいというアドバイスをするコンサルタントも多いようですが、私はそのようなアドバイスを絶対にしません。中小企業はほとんど配当などしませんので、無議決権株式など相続でもらったとしても何の価値もなく、却って感情的な不満が募ります。遺言書により兄弟関係が悪くなるようなアドバイスをするコンサルタントは仕事のやり方が間違っていると思います。また、無議決権株式が次の台に相続されて徐々に分散していくのは、株式譲渡なども想定した場合には障害となる可能性があります。何度も申している通り、株式は分散させないように、単独相続させることが重要です。そのために、金融資産の準備が必要であれば、時間をかけて準備をすればいいだけのことなのです。

よって、遺留分に関するポイントは、遺留分相当額の現金を長期間かけて用意して遺言で相続させ遺留分減殺請求権を行使できないようにするということです。
仮に遺留分減殺請求権を行使しなかったとしても、上記の次男は長男が取得した財産の4分の1しか相続しないことになり、かなりの不満を持つ可能性もあります。その点については、代表者の父が生前によく説明して理解を求めておく必要があります。仮に、次男が不満であるとしても、株式が分散し、会社内の兄弟げんかが会社経営にまで影響を与えるという最悪の事態は避けることができるので次男の不利益はその限度でやむを得ません。できれば、次男にも長男と同じだけの金額の金融資産を相続させるという遺言書の内容が理想であると思います。兄弟げんかを避けるには、会社代表者の父には次男に長男と同じだけの金融資産を残せるだけの事前準備をする必要があります。
また、株価が上昇すれば、父に配当するなどして株価を調整すればいいと思います。また、いったん書いた遺言を定期的に書き直す作業が必要となるのかもしれません。

◆経営承継円滑化法(民法特例)について
円滑で発展的な事業承継のために、できるだけ早い段階から後継者が株式を保有して経営にあたることが望ましいといえますが、生前贈与しようとすると遺留分侵害の問題が生じます。そこで、経営承継円滑化法は、除外合意と固定合意の制度を設けました。
除外合意は、生前贈与株式を遺留分算定の基礎から除外する制度であり、固定合意は、遺留分算定に含めるが、その金額を固定する制度です。
要件としては、自社株を承継しない推定相続人全員の同意等が必要であるなどの点で使いにくいと言われておりますが、遺留分相当額の金融資産を確保したうえで、同意求めるという事前準備があれば、十分に活用しうる制度であると考えております。

4 納税資金を確保する。税金対策を考える。

自社株を生前贈与や遺言で事業承継者に相続させる場合には、事業承継税制という制度の活用が必要です。
立法趣旨としては、株価が高額で相続税の納付のために、事業継続が困難となることを防ぐことにあり、相続税80%、贈与税100%を軽減してもらえる制度です。少し要件が複雑ですが、この制度を活用すれば、自社株式の分散を防ぐことができます。

最近よく思うことですが、税理士やコンサルタントは、税法上の制度をあまり活用せず、複雑な節税スキームを組みたがる傾向にあると思います。事業承継税制や経営承継円滑化法は、遺留分減殺請求権という制度が存在することを前提としつつ、株式の分散をなるべく防止しようとしています。やはり株式の分散は企業の経営推進力を低下される可能性があり、それを避けることが立法趣旨だと思います。
とすれば、相続を扱う専門家としては、株式の分散防止による企業の経営力低下を防ぎ、相続人間の争いにより企業の業績が悪化したり、閉鎖する事態を防止することを、まず第一に考えて業務を行うことが必要であると考えます。

先ほどの例の場合、子供が二人で、長男に株式全部を相続させ、次男には金融資産のみを相続させるという場合は、資産総額が2億円で、株式の評価額が1億5000万円であれば、次男には5000万円の金融資産を相続させれば、遺留分減殺請求権を行使することはありません。長男は1億5000万円の株式を相続したことに対して、本来、相続税を支払う必要がありますが、経営承継円滑化法上の除外合意や固定合意を使って遺留分減殺請求権の行使を防ぎ、事業承継税制を使って贈与税や相続税の負担を軽くすれば、長男はほとんど相続税の納税義務はありません。仮に2割の負担が発生したとしてもそれぐらい自分で支払いなさいということでいいと思います。

あと、相続税法上の節税ですが、無理に配偶者の税額の軽減制度を使って収める税金を安くするよりかは、事業承継者が安定して自社株を単独所有できるようにする方が、企業継続の観点からは望ましいと考えています。

先ほどの例でいうと、社長の奥さんが存命であった場合に、奥さんに相続させると1億6000万円まで非課税となることから、無理に奥さんに1億6000万円を相続させる必要性はありません。奥さんが亡くなった時のことを考えて、父の時と同じように対策を講じる手間の方が無駄であると思います。結局、一時的な節税目的を達成したとしても、奥さんが亡くなればまた同じように税金対策が必要となりますので、全く無意味であると考えています。

要するに、冒頭で述べた事業承継対策時の検討事項と順番が非常に重要であるということに尽きると思います。

5 まとめ

事業承継(自社株相続)対策の目的は、社長の死亡後の私的成功と社会的成功であり、具体的には、
(ア) 相続人に揉めさせない。
(イ) 企業継続と雇用確保を優先する。
ということに尽きると思います。
特に遺留分対策のための金融資産の確保は難しい例もありますが、原則に則り、早めに対策を始めるとそれほど難しいことはありません。
100年企業を目指せば、事業承継は30年に一度は起こりますので、3回は事業承継対策をする必要があることになります。
2代目が事業を承継した後、10年~15年が経過した時点で、次の事業承継のことを考え始め、15年程度かけて事業承継の準備を行うべきと考えます。
事業承継問題は、本来は10年15年単位の長期的準備が必要な問題といえるのです。

6 事業承継を受ける予定の息子さんや社長の奥さんの嘆き

息子さんや奥さんからのご相談で、社長である父や夫がなかなか遺言を書いてくれないという愚痴を聞くことが良くあります。
父に相続の準備の話をすると「俺を殺す気か!」とか「縁起が悪いことをいうな。俺はまだまだ死なない。」とか言って、遺言をなかなか書いてくれないというご相談です。

多くの社長さんは自分が死ぬこと等計画するのは嫌だと思います。考えたくもないというのが正直なところではないでしょうか?
しかし、そんな社長さんも、生命保険には加入している人がほとんどです。これも死んだときのことを考えての準備の一環といえるでしょう。

また、互助会に入って、自分が死んだときの葬式のグレードまで考えて、毎月せっせと積み立てをしている人もいます。
更に、まだ死んでもいないのに、自分の墓を先に買って、名前を朱色で染めている人もいます。これも死ぬ準備といえるでしょう。
でもどうして、遺言を書いてと頼むことはタブーなのでしょうか?全く矛盾しているという他ありません。
冒頭でも申し上げた通り、社長には死亡後の私的成功と社会的成功を達成し、家族間の相続紛争を未然に防ぎつつ、企業を継続させ社員の雇用を守り、その家族の生活を守り、取引先を守り、その社員の生活を守る責任があるといえます。

事業を始めて15期を過ぎたあたりから、次の世代に引き継ぐために準備をする必要があります。多くの社長さんがそのことに気が付いて、早めに事業承継対策を講じ始めれば、相続を原因として閉鎖する企業が亡くなると考えています。

7 当事務所では、事業承継対策のための法律・税務会計・事業計画の総合サービス顧問を取り扱っています。是非一度ご相談ください。

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自社株の売却の問題について

我が国は、今後人口減少を続け、40年後には1億2800万人から8600万人にまで減少するといわれております。人口が33%も減少するのです。すなわち、日本全体の労働生産力が33%も減少するのです。今までに経験したことのない未曾有の不況の波が来るのではないかといわれています。
しかし、中小企業の7割程度は後継者がいないといわれており、後継者不在による企業の閉鎖が今後急速に増加することが予測されます。
しかし、これをそのまま放置すれば、日本の伝統技術や競争力ある技術、地域雇用が失われていくことになり、これに人口減少による労働生産性の低下が拍車をかけることとなり、日本の国力の衰退につながりかねません。

そこで、中小企業が長年かけて営んできた事業、長年培ってきた技術、歴史、文化を次世代に引き継ぐため、中小企業のための「M&A」のご相談をお受けしております。
事業承継・合併、株式譲渡、事業譲渡などは、法律面のみならず、税制面からのアプローチも必要不可欠な分野といえます。
また、株価の維持や株式の分散の解消、代表者の引退時の退職金の確保など、長期間の対策が必要となるケースもあります。
当事務所は、社長が引退される10年前から、自社株の売却の準備を進めるべきと考えております。
初期の対応としては、会社の現状の把握、問題点・課題点等の改善計画及び譲渡予定時期の確定、株式評価が主な業務となります。
次いで、月次のモニタリングの開始、借入金の返済等による財務の改善を行います。
そして、いよいよ引退の時期が近付いてきた際には、譲渡先の候補リストの作成、ターゲット探索、秘密保持契約、株式譲渡契約または営業譲渡契約の締結、税務申告という流れになります。

統計によりますと75歳を過ぎても、引退の時期を5年以上先と考えている経営者の方は60%と越えているといわれています。
引退間際に慌てて株価の評価を良くしたり、分散した株式を整理することはできませんので、70歳を超えられた社長様は一度ご相談に来られることをお勧めしております。

当事務所では一般財団法人日本M&A推進財団(http://www.mjr-zaidan.com/)の会員として、多数の案件を手掛けてきておりますので、安心してご相談いただけます。

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