ハマキョウレックスH30/6/1最高裁判例 有期雇用に手当なしは無効 

180607有期雇用手当なし不合理イラスト
《事案の概要》
 有期雇用契約を締結して会社に勤務している労働者が,無期雇用契約社員との間で,①無事故手当,②作業手当,③給食手当,④住宅手当,⑤皆勤手当,⑥通勤手当,⑦家族手当,⑧賞与,⑨定期昇給及び⑩退職金に相違があることは労働契約法20条に違反しているとして、正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を及びその手当の差額の支払を求めた事案です。
《結論》①無事故手当→違反,②作業手当→違反,③給食手当→違反,④住宅手当→違反せず,⑤皆勤手当→違反,⑥通勤手当→違反,⑦家族手当→不明,⑧賞与→不明,⑨定期昇給→不明、⑩退職金→不明、として損害賠償を認容した。
《私見》
 '契約期間の有無で手当ての有無に差を設けることは、手当の趣旨に照らして合理性を会社が説明できない限り、労働契約法20条により無効となり、差額について賠償義務が生じるということになると思います。
 手当の支給について、契約期間の有無で差を設けてきた企業にとって、集団訴訟に発展する新たなリスクが顕在化したといえるでしょう。時効期間が経過する過去2年間の不合理な取り扱いについても賠償請求されるリスクがありますので、できるだけ早急に給与体系を見直し、就業規則を修正する必要があります。
 以下は、最高裁の判例論旨を読みやすく勝手に要約したものです。正確な論旨を見たい場合は原文にあたってください。
 《論旨の要約》労働契約法20条は,期間の定めの有無による当該労働条件の相違は,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはならない旨を定めている。
同条は,有期契約労働者については,無期労働契約を締結している労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく,両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ,有期契約労働者の公正な処遇を図るため,その労働条件につき,期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。そして,同条は,・・・職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される。労働契約法20条により、有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となる。
 ①無事故手当は,優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得を目的として支給されるものであると解されるところ,上告人の乗務員については,契約社員と正社員の職務の内容は異ならない。・・・したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の無事故手当を支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理である。
 ②作業手当は,特定の作業を行った対価として支給されるものであり,作業そのものを金銭的に評価して支給される性質の賃金であると解される。しかし、契約社員と正社員の職務の内容は異ならない。また,職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることによって,行った作業に対する金銭的評価が異なることになるものではない。したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の作業手当を一律に支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は不合理である。
 ③給食手当は,従業員の食事に係る補助として支給されるものであるから,勤務時間中に食事を取ることを要する労働者に対して支給することがその趣旨にかなうものである。しかし,契約社員と正社員の職務の内容は異ならない上,勤務形態に違いがあるなどといった事情はうかがわれない。したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の給食手当を支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理である。
 ④住宅手当について、両者の職務の内容に違いはないが,正社員は,出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるほか,等級役職制度が設けられており,・・これに対し,契約社員は,就業場所の変更や出向は予定されていない。
 この住宅手当は,従業員の住宅に要する費用を補助する趣旨で支給されるものと解されるところ,契約社員については就業場所の変更が予定されていないのに対し,正社員については,転居を伴う配転が予定されているため,契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得る。したがって,労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものとはいえないから,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないと解するのが相当である。
 ⑤皆勤手当は,皆勤を奨励する趣旨で支給されるものであると解されるところ,上告人の乗務員については,契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから,出勤する者を確保することの必要性については,職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない。
 したがって,上告人の乗務員のうち正社員に対して上記の皆勤手当を支給する一方で,契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,不合理である。
 ⑥通勤手当は,通勤に要する交通費を補塡する趣旨で支給されるものであるところ,労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。したがって,正社員と契約社員である被上告人との間で上記の通勤手当の金額が異なるという労働条件の相違は不合理である。
  

コメント


認証コード2013

コメントは管理者の承認後に表示されます。