労働問題

労務管理は企業経営の要です。労務管理は、法律、経営、会計・税務の3分野が重なる企業の核心部分と捉えるべきであると思っています。労働分野は、法律、経営、会計税務の3つの視点から問題点と課題を抽出して、計画的に管理し、問題点があれば改善に取り組むという姿勢が重要であると考えます。

労務管理

法律の面から言えば、労働法制は、複雑多岐にわたり、毎年のように改正されます。労働関係は、労働契約から始まり、試用期間を経て本採用となり、一般には長期雇用が予定され、継続的な契約関係が続きます。長期継続が予定されている契約関係であるからこそ、紛争の種は後を絶ちません。
採用段階では、経歴・病歴等の詐称、求人広告と労働条件の不一致、面談時の調査範囲の問題などがあります。
また、採用後は、試用期間中の解雇、残業代未払い問題、有期雇用の無期転換、派遣、パート社員の問題、有給休暇未消化問題、就業規則による労働条件の変更有効性や懲戒解雇等の懲戒処分等の有効性、パワハラ、セクハラ、メンタルヘルス、労災、不当労働行為、労働組合との団体交渉、・労働協約、転籍・出向、営業秘密漏洩等の不正競争の問題、退職後の競業制限の問題、使用者責任の問題など、トラブルの宝庫といっても過言ではありません。
特に長時間労働の問題による労働災害の発生にあたっては、企業は厳しくコンプライアンス違反に対する責任を問われる恐れがあります。

会計・税務の面から言えば、労働関係費用は製造原価や販売及び一般管理費となり、経費としての一面があります。
一般には、企業の固定費に占める賃金の割合が高く、労務費の管理は企業存続のキーポイントとなります。労働集約型の業種であれば、経費の多くが労務費や賃金であるという企業も多いのが実情です。
固定費の削減のために労務費削減を検討する企業が多くありますが、いわゆるリストラは裁判例上の厳格な4要件を充たす必要があり、安易なリストラによる経費削減は法務リスクが付きまといます。
また、賃金に関しては、多くの企業で税金対策として、決算期賞与が活用されています。しかし、無計画なキャッシュアウトを伴う税金対策は企業経営を危うくすることに気が付いていない経営者の方が非常に多いのが実情です。
また、社会保険料の滞納問題や源泉徴収税の不納付問題は調査による追徴課税などで企業経営を危機的状況に追い込む危険性もあります。

経営の面から言えば、社員を固定費の発生源として捉えるのではなく、むしろ資産としてとらえる必要があります。会社満足、お客様満足のみならず、社員満足を意識しなければ、会社経営は成り立ちません。
経営者の多くの方は、組織運営に悩まれていたり、人事評価方法に苦労されていたり、経営面での労務関係の悩みは尽きません。
組織力強化には、①企業理念や目的の設定、②事業計画による中長期的な全社一体となった組織的取り組み、③平均給与額、一人当たりの労働生産性、社員給与分配率、労働分配率等の現状把握が欠かせません。
欠員が生じた場合に補充採用を行う企業が多くありますが、自社の適正人員が一体何名であるのかを知らない経営者の方が多いのが実情です。また、労働生産性が同業種平均と比べてどの程度であるか、自社の適正な社員給与分配率は何パーセントなのかという問いに答えられる経営者の方も非常に少ないのが実情です。

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労働問題に対する対応姿勢

●未払い残業代等の労働紛争が発生した場合、それは氷山の一角であり、経営上の問題が顕在化したにすぎません。すなわち、労務紛争の発生は、売上低下による財務状況の悪化が原因であるケースが多いのが実情です。
しかし、労務紛争の発生により、却って財務が悪化するという悪循環に陥るケースも多くみられます。
例えば、価格競争による顧客単価減少、売上低下により、従業員への残業代の未払いが発生し、労働者一人の未払い残業代請求事件をきっかけとして、それが高額の残業代未払いの集団訴訟に発展するケースがあります。
そのような事態に陥れば、企業の財務がさらに悪化し、企業存続自体が危ぶまれる事態にもなりかねません。
一つの労働問題の発生により、その発生原因を特定し、その原因そのものの改善を図らなければ、同種の労働問題が頻発し、集団訴訟に発展するリスクも高まりますので、早急な対応が必要です。
就業規則や労働条件の変更等により、集団訴訟のリスクを回避できるのであれば、労働者に財務状況の悪化を説明し、協力を求めることで解決を図るという手法も有効です。経営者として説明義務を果たし、労働者と真摯に協議するという姿勢が伝われば、意外と理解を得られるケースが多いというもの実情です。

●また、ユニオンや労働組合との交渉において、不当な条件提示に対しては、財務上の情報をもとに、無理な賃上げ等の要求が不可能であることを合理的に説明する必要があります。会社の財務情報を秘匿し続けるという姿勢は却ってコミュニケーション不足による懐疑心を労働組合に側に募らせる結果となります。

開示できる範囲内で財務情報を開示し、事業計画を提示して近い将来の会社目標を提示し、協力を求めるという姿勢が重要と考えております。

●また、業績悪化による安易な人員削減は違法な整理解雇として無効となる可能性が高いと言えます。そのような企業はほとんどの場合、労働生産性や労働分配率を把握せず、自社の適正人員を把握せず、安易に補充採用や無計画な採用を継続してきた企業が多いのが実情です。自社の労働生産性を把握し、自社にあった適正な労働分配率を決定し、安易な採用ではなく、労働生産性向上を重視した経営に切り替える必要があるケースも散見されます。

経営者の方の中には、労働生産性を計算したことがない方も多くいらっしゃいます。労働生産性とは、社員一人当たりの限界利益のことを言います。限界利益とは、会社の粗利のことです。いったい自分の会社の生産性が高いのか低いのか、平均なのか、将来の労働生産性の目標数値はいくらなのか、実はそういった基本的な経営上の数値が業績を良くするキーワードとなることも実際には多いのです。

●労働契約は継続的かつ集団的契約であり、労働法規違反は企業の存続にかかわる大きな損害を企業にもたらす可能性がありますので、実態把握と中長期的な改善が必要なケースも多く、当事務所では、顧問契約による継続的なアドバイスが最も有効な分野であると考えております。

労働問題とスポットでお請けすることも多いですが、単発的な労働問題の解決だけでは企業の抱える潜在的リスクを解決することはできないケースも多いのが実際です。

コンプライアンス(法律を遵守すること)はもちろん重要ですが、その計画と実行こそが重要であると考えております。

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