事業再建と破産による人生再建

「経営状態が悪いがどうしたらいいか?」「なんとか会社を再生したい」「リスケジュールしたい」などのご相談をお受けしております。
 当事務所の弁護士は税理士資格も保有しておりますので、資金繰りのご相談やリスケジュール等のご相談にも対応しております。

目次

一. 緊急事態宣言

 現在(令和2年4月8日)、新型コロナウィルスの影響により、緊急事態宣言が出されております。

 多くの中小企業の売上が激減し、先行きが見通せず、不安に感じておられる経営者の方も非常に多いと思います。

 製造業では受注が激減し、飲食店等では休業しつつも、店舗家賃の負担を強いられるという状況下にあります。

 既に新型コロナウィルスの影響で、資金が底をつき、破産申立を決断された経営者の方からのご相談も多数受けております。

 このような誰も経験したことのない経営環境の悪化をどう乗り切っていくのかについて、可能な限り支援することが弁護士や税理士の使命であると考えております。

 極限状態の不安を抱いている方の気持ちが少しでも前向きになれるようなアドバイスをしたいと思っています。

 経営者として、会社と従業員を守るべき立場にある方が、今後とるべき行動について書かせていただきましたので、ご一読いただければ幸甚です。

二. 新型コロナウィルスの影響下での会社の対応方法

1. 現状の確認

 まずは、現状を客観的に正確に把握することが必要です。

 売り上げが急速に減少している状況を正確に数字で把握することから始めてください。

 そのためには、資金繰り表の作成が必要です。

 資金繰り表とは、現時点の現預金残高から、2~3か月先の現預金残高を予想して把握するものです。

 現金ベースで、いついくら入金があり、いついくら支払いを行わないといけないのかを把握するために作成します。

 税理士の作成する決算書や月次の試算表を見ても必ずしもこれから先の予測はできません。

 現状における現預金残高を通帳等で確認し、資金繰り表を作成して、あとどれぐらい現預金が残っているのかを経営者自らが把握し、それが今後、何か月でなくなるのかを、なるべく正確に予測し把握することが大切です。

 現在の現預金残高がひと月で30%ずつ減少していけば、3か月でほぼ現預金がなくなります。

 タイムリミットが3か月であるとすれば、それを何とか6か月にできないか、12ヶ月にできないか、知恵を絞るのです。

 知恵を絞るには、前提となる正確な現状把握が必要です。資金繰り表は絶対に必要な資料です。

 資金繰り表のフォーマットはここからダウンロードできます。一度作成してみてください。

2. どの様な状態となれば破産なのか

 破産法上の破産の要件は支払い不能です。借り入れや仕入れ代金等について返済できない場合は、破産の要件を満たします。

 黒字であっても支払い不能であれば、破産の要件を満たすことになります。

 黒字倒産とは、売掛金等があって、決算書上は利益があっても実際には売掛金等を回収できず、債務の支払いができない場合を言います。

 資金繰り表作成の目的は、支払い不能状態を回避することにあります。

 売掛金の回収時期、実際の回収可能性の有無、買掛金の支払い時期、いくらぐらいであればいつまで待ってもらえるか、借り入れ金の返済時期と額を確認して、現預金がゼロとなる時期が来るのかどうか、来るのであればいつ来るのかを確認します。

 また、ひと月の内、最も現預金が多い日と少ない日とその金額を把握します。

 また、翌月の現預金額が一番少なくなる日の現預金残高が、前月よりも少なくなるのか、どれぐらい少なくなるのかを把握します。

 現預金がゼロとなれば、支払いが不能となりますので、できる限りの対策を講じる必要があります。

3. 支払い不能回避の方法

① 借入の検討

 まずは、新型コロナウィルスの影響による特別枠の借入が可能であるかどうかを調べる必要があります。

 日本政策金融公庫や地方自治体等で日ごとに色々な対策や融資商品がでていますので、経済産業省や地方自治体のホームページを参照して、できるだけ早期に申し込みをしてください。

 既にリスケジュールをしている会社の場合は、特別枠でも融資が困難なケースが多いですが、あきらめずに申し込みをしてください。

② 借り入れ等の支払いの延期

 銀行の借入を返済できなくとも、リスケジュールを申し込めば、利息だけの返済で、元金の返済を一定期間(通常は1年ごとに更新)猶予できる可能性があります。

 消費税や社会保険料も納付の猶予や分割弁済ができる場合があります。

③ 遊休資産の売却や換金

 不動産などはすぐには買い手が見つかりませんし、製造業の機械など、事実上売却すると経営が成り立たない場合も多いのが実情です。

 しかし、お金に余裕があるときに購入した節税目的の積み立て型の生命保険などはすぐに解約して、安い掛け捨ての保険に入りなおしてください。

 また、間違っても、自殺して保険金で借金を返済しようなどとは考えないでください。借金を苦に命を絶つなど、決してあってはなりません。命以上に大切なものなど、この世には存在しません。

④ 家賃等の減額交渉

 飲食店など売り上げが全く上がらない業種で多店舗型の経営をしている会社は家賃の負担が相当きついです。

 駄目元でもいいので、家賃を半額にして欲しい、しばらく猶予できないかを問い合わせてください。

 ほとんどの家主は家賃減額の申し出を拒否する可能性が高いですが、中には減額に応じてくれる家主もおられますので、あきらめずにまずは交渉してください。

 飲食店の店舗などは居抜きで売却できる場合もあります。

 現在は、新型コロナウィルスの影響で値段はかなり下がりますが、多店舗営業の飲食店などは思い切って居抜きでの売却を検討するべきです。

⑤ 代表者の会社に対する貸付

 個人資産があれば、会社に貸し付けを行います。この時のためにやはり貯金をしておくべきですね。

 個人資産がない場合は、親戚や家族から借り入れる方が多いのですが、借り入れる前によく考えてください。

 万が一、破産手続に至ってしまった場合にも、その費用は捻出しなければなりません。散々借りた後に弁護士費用を借り入れようとしても断られる可能性があることを考えると、親戚や家族からの借入は最後の手段として決断されるべきです。

 また、カードで切手などを買って換金したり、サラ金やキャッシングを利用する方もいらっしゃいますが、絶対にやめてください。

 経営者が精神的に追い詰められる最たる例は、支払手形による不渡り回避のために、闇金やシステム金融から借り入れを行い手形のジャンプを繰り返すことです。(なお、緊急事態宣言下では、不渡りによる銀行取引停止処分は行われないとの報道がありましたので、ご留意ください。)

 中には、携帯電話を何台も購入させて送付させ、受領後に金を貸すと騙す詐欺師も多いです。

 送付した携帯電話は、オレオレ詐欺の道具になります。

携帯電話を購入して送付するように言われても決して送ってはいけません。100%お金は借入できません。

 サラ金や、キャッシング、闇金やシステム金融を利用し始めると、ほぼ確実に末期症状といえます。

 資金繰りのための奔走が長引くと精神疾患に陥る人もおられます。思い詰めた結果、自殺を考える方もおられます。一人で抱え込むことはやめ、速やかに資格を有する弁護士に相談してください。

⑥ 従業員の解雇

 事業縮小で余った人員は、解雇もやむを得ません。

 休業補償を行って、国から助成金を受ける方法もありますが、手続が複雑で時間がかかりますので、当座の資金に余裕のある会社しか事実上利用できない状況です。

 従業員を解雇して、失業保険を受けて頂くという選択肢も考慮しなければならい状況かもしれません。

 解雇は最後の手段です。

 しかし、会社が潰れてしまえば、社員全員が失職します。

 一部の社員を解雇し、その他の社員を守るという選択肢も考えなければならない厳しい状況となっています。

⑦ 専門家への相談

 どの様な方法を講じても、3か月程度しか、現預金が持たない場合は、速やかに弁護士に相談してください。


三. 破産がやむを得ない場合

1. 破産とは「破って 産まれる」と書きます

 決して人生の終わりでも、地獄でもありません。

 破産法は、再建のための法律です。

 破産手続きが終わり、免責されれば、負債は全くゼロとなります。

 いつまでも負債を負担し続けることなく、再スタートが切れるのです。

 再スタート後の人生設計こそが大切です。

 当事務所で破産手続きを行う方で、まだ、50代、60代の方は、5年後、10年後、どのような生活を送りたいのか、苦労を掛けた奥さんに何を買ってあげたいのか、どんな家に住まわせてあげたいのかなど、具体的な目標を設定していただきます。

 夫婦や家族が一丸となって、現在の苦境を乗り越えて、再建後の目標を達成することを誓うこと、これが破産手続きを行うにあたって一番大切なことだと考えています。

 破産は、終点ではなく、新たな目標達成のための出発点です。

 奥さんの目の前で、「破産手続が終わって、10年後には、必ず、もう一度奥さんに家を買ってやりたい。」と誓った方もおられました。

 それまで不安や辛いことの連続で涙されていた奥さんでしたが、この時ばかりは、旦那さんの誓いの言葉に嬉し涙を流されました。

 かつて私が破産手続きのお手伝いをした方で、その後新たに事業を展開され、現在は私の事務所で税務顧問を務めているケースもあります。

 破産手続きを経て、現在は、堅実な経営を実践されておられます。

 私は、破産の法律相談後に、もっと早く来ていれば良かった、と笑顔で足取りも軽く帰って行かれるような法律相談を目指しています。

2. 破産手続でよくある質問

(ア) 法人が破産する場合は、代表者も破産するのか?

代表者が会社の債務の保証人になっている場合は代表者も破産するケースが多いです。

(イ) 旦那さんが破産すると奥さんも破産する必要があるか?

会社や旦那さんの債務の保証人となっている場合は、奥さんも破産する必要がある場合があります。

(ウ) 父親が破産すると子供に影響があるのか?

影響はないです。保証人となっていれば影響があります。

(エ) 法人の代表者の個人所有の不動産はどうなるのか?

 法人の代表者が個人保証していたり、自宅に抵当権が設定されている場合は、強制執行されて自宅を失うことになるケースが多いです。

 強制執行されて落札されると安価となるので、債権者は任意売却を希望するケースが多いです。

 任意に売却すると、引っ越し代等が出される場合もありますので、なるべく任意売却に応じた方が破産者にとって利益となるケースが多いです。

 また、破産しても半年ぐらいは自宅に住んでいることができるケースもあります。すぐに出ていかなくてもいい場合が多いです。

(オ) 親戚には迷惑をかけたくないし、仕入れ業者にも迷惑をかけたくない。銀行だけ泣かせて、親戚と仕入れ業者には債務を支払いたいけど、いいですか?

 駄目です。偏頗弁済となり、破産管財人が否認訴訟を起こす可能性があります。債権者は平等に扱う必要があります。特定の債権者のみを有利に扱うことはできません。

(カ) 破産すると全部お金がなくなるのか?

 破産手続きは、支払い不能の状態で残った財産を換価して、債権者に平等に分配する手続です。しかし、99万円までは自由財産として認められます。

(キ) 破産した後に勤めることはできるのか?

 破産手続きは、申立、破産開始決定、換価手続、配当手続、廃止決定、免責決定手続きと順次進行します。

 会社を廃業して、すぐに別の会社で勤務することも自由です。事業を行うこともできます。
 ただし、破産開始決定時点での自由財産は99万円までですので、その点に留意する必要があります。

四. 弁護士に相談するタイミング

 当事務所の弁護士は税理士資格も保有し、決算書を見ればある程度の会社の体力がわかります。

 融資の支援や経営における問題点等の指摘も可能です。もちろん、法律的な知識もあります。

 破産は、人生の終わりではありませんが、なるべく避けたいと思うのが普通ですし、私自身もなるべく破産は避けるべきと考えています。

 破産やむなしに至る前に、経営者にはやるべきことが山の様にあります。

 それをひとつずつアドバイスし、破産を避けて、経営を継続し、何とか現預金が回復し、現在では、通常通りに営業されておられる会社もあります。

 ただし、来月には、現預金がなくなるという厳しい状況で相談に来られた場合は、再建する可能性は著しく低くなります。

 よって、ご相談のタイミングは、「できるだけ早く」というほかありません。

五. 最後に「借金ぐらいで死んではいけません。」

 私は弁護士になって16年目です。私が弁護士になった平成14年頃は、破産事件が多く、自殺者も年間で3万人を超えていました。

 自殺の原因の第1位は病気で、第2位が事業不振といわれています。

 事業不振で鬱などの病気になる人も多いです。

 毎日、資金繰りで飛び回り、一日中、債権者に頭を下げて回ると、自尊心が失われ、自暴自棄になるかもしれません。極端に強いストレス下に置かれて、本人も気が付かないうちに精神疾患に罹患している人も多いと思います。

 私が弁護士となった時代は、事業不振で精神疾患となり、自殺をする人が多かった時代です。

 新型コロナウィルスによって、再びそのような時代が来るかもしれません。

 しかし、借金や事業不振は、不治の病ではありません。

 借金を返すことは素晴らしいことですが、返済のために無理をすることで自身の命を縮めることにもなりかねません。

 また、大切な家族を悲しませることにもなりかねません。

 仮に、借金を返し切った時には既に再建が不可能な年齢かもしれません。

 経営者は引退するまでに3回は自殺を考えると言います。

 破産手続を経験した多くの経営者は、もっと早く相談すればよかった、とおっしゃいます。

 破産手続を乗り越えて、再建後の目標に向かって邁進している方の言葉です。

 現在、不安があれば、それから目を避けずに、向き合って、何が起こっているのかを勇気を出して直視し、どのような解決方法があるのかを知ることが大切です。

 一人で悩まずに、まずは、専門家に相談してください。

 現状を把握し、このままいけばどうなるのかを予測し、10年後のご自分の将来はどうなっていたいのか、それを達成するには、今、どの選択肢を取るべきなのかについて、一緒に模索し考えたいと思っております。

 どうぞ、ご安心のうえ、お気軽にご連絡ください。

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